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フランス ノルマンディー旅行記 2012 〜カルバドスの故郷を訪ねて〜 

2012年 5月 2日(水)

二日目の朝も天気は上々。筋肉痛にもならずに済みました。

今日からはレンタカーを借りているので精力的に廻りたいと思います。

まずは勿論、昨日たどり着けなかった「Adrien Camut : Domaine de Semainville」です。

昨日自転車で通った道を改めて進んでいきます。

細い田舎道なのでそんなにスピードを出してるわけではないのですが、やはり自転車ほどは景色を楽しむ

感じにはならないものです。

昨日は景色を楽しめただけでも価値があった。と、自分を慰め...。

30分足らずで目的地に到着。やっぱり、車ってすごい。

Domaine de Semainvilleの入口。

 手作り感満載の表札。


こんな場所です。リンゴ畑に囲まれています。

大きな地図で見る

敷地の中まで乗り入れて車を降りると、存在感のある、でもどこか可愛らしい建物から

女性が出てきてくれました。

こちらは住居のようです。

見学をしたい旨を伝えると取り次いでくれて、長身のナイスガイがちょっと面倒くさそうに迎えてくれました。

彼が、案内してくれたエマニュエル Emmanuel さんです。



このDomaine de Semainvilleは先々代のAdrien Camut氏によって様々な変革が行われ、

それまでは"Calva"と呼ばれコーヒーに入れて飲むものというイメージだったカルバドスを現在のような

洗練された飲み物へと進化させました。

エマニュエルさんはAdrien氏の孫にあたり、三兄弟の二男で、兄のJean-Michel、弟のJean-Gabrielと共に

現在このDomaineの運営を行っています。


住居らしい母屋の奥に蒸留所(というか大きめの納屋)や熟成庫(というか納屋)があり、案内してくれました。

原料となるリンゴの収穫は全て自分たちの畑からまかなわれ、時期は品種によって異なり10月から12月に

渡ります。収穫されたリンゴはさらに熟すまで一定の期間保管され、プレスされジュースを搾ります。

リンゴのプレス機。

右側に写っているのが旧式のプレス機。
現在は使用されていないと思います。

搾ったジュースは大きな樽(10,000L)の中でゆ〜っくりと発酵して“シードル”になります。

見学の間、この犬がずーっとついてきてました。


シードルは収穫の翌年の8月〜9月にかけて2回蒸留されます。

1回目の蒸留で23%前後になり(この状態をプティット・オー petit-eauと呼ぶ)、

2回目の蒸留が終わると72%のオー・ド・ビー eau de vie となります。

2基のアランビック(フランスでは蒸留機をこう呼びます)

2基の蒸留機が並んでいると、ついついシングルモルトの発想から、どっちが初留釜でどっちが再留釜?

と思って質問してみると、ちょっときょとんとした顔で「特にそういうのはないんだ...」と。

モルトの場合は1年を通して蒸留が行われていて、初留から再留が連続的に実施されますが、

カルバドスの場合は、全てのシードルの初留が完了してからまとめて再留が行われるわけです。

つまり、2基の蒸留機で何サイクルもの初留を行ってプティット・オーを溜めておき、

また、2基の蒸留機で何サイクルもの再留を行う。初留釜、再留釜というのはないんですね。


で、蒸留のシーズンになると1カ月以上このサイクルが続くわけです。

24時間寝ずの番が必要になるので、兄弟が交代で作業を続けるそうで、この季節は大変なようです。

しかもこの蒸留釜は薪の直火加熱。火加減の調節が難しそうです。

特に2回目の蒸留はより繊細な温度管理が必要だそうで、この時使用される薪は全てリンゴの木だそうです。



薪の直火加熱を行っているところは現在ではそう多くないようです。

モルトの蒸留所で直火加熱というと石炭ですが、これは蒸留釜のサイズの違いからくるんですかね。


そうして得られた eau de vie は樽に詰められ熟成されるわけですが、ここに Camut家のこだわりがあります。

多くの生産者では、特に若い原酒は小さく、かつ新しい樽が使用されますが、ここでは全ての熟成が

非常に大きなサイズの古樽で行われるのです。

容量20,000Lの大樽

例えば、最近スコッチでは「クォーター・カスク」や「オクタブ」などの小さな樽で熟成されたものがあります。

樽のサイズが小さいほど、容量に対して液体が樽材に接する面積が大きくなるわけで、

それだけ樽の影響を強く受けることになります。

Camut家のカルバドスの熟成とはオーク材の香りをつけるとかその成分を原酒に抽出させることではなく、

ゆっくりと寝かせ、空気と触れることによってアルコールに含まれるいやな香りの成分を取り除くことなのです。

エマニュエルさんが印象的な事を言っていました。


僕らが作っているのはコニャックやアルマニャックではなく、カルバドスだから。」


かっこよすぎです。


そんなこんなで一通りの見学を終えて、いよいよお楽しみのティスティングということで

ティスティングルーム?に案内されました。



この部屋にも大きな樽がいくつもあり、ボトリングやラベル張りなどの作業も行うようです。

一番奥の樽の前には、なにやら風呂桶のような容器があり、樽からホースが伸びています。

エマニュエルさんが樽の下の方についている蛇口をひねると、中のカルバドスがドーッと流れ出ました。



で、このホースがポンプと繋がっており、汲み上げられたカルバドスはまた樽の中に戻されます。



これは「エアレーション」という作業で、カルバドスの中のいやな香りを取り除くために行います。


部屋の反対側の上の方に目をやると、小さなサイズの樽が並んでいました。

熟成には大樽しか使用しないと言っていたので、これらは何かと尋ねてみると、

家族や親戚の記念の年のカルバドスをストックしている、言わば「ファミリー・リザーブ」とのこと。



エマニュエルさんがその中の’71年の樽を指さし「あれは僕の生まれた年だよ。」と。

「えーっ、僕より4つも年下なのかー」との驚きはぐっとこらえて、

たまたまあった’67年の樽を指さし、「That's my vintage.」と返すと

「えーっ、こいつ4つも年上なのかー」との驚きをグッとこらえているのが感じられました。

すると、梯子を持ってきて樽の中にチューブを差し込み、グラスに注ぎティスティングさせてくれました。

 帽子をとったエマニュエルさんは年下とは思えない貫禄。

「どう?飲める?」みたいな感じで感想を聞いてきました。

「いやいや、素晴らしいですよ。」

彼も一口飲んでみて「うん、悪くないね。」

こんな貴重なものを飲ませていただいただけでも感謝感激なのですが、なんとなんと、

空のボトルを持ってきて詰めてくれたのです。「これはプレゼントだよ!」と。

感激で言葉がありませんでした。

このボトルは何かの記念の時に開栓したいと思います。

 鍋に入った蝋をとかして密封します。

普段のボトリングも一本一本こうして手作業で行うのでしょう。

まさに手作りのカルバドスであることがうかがい知れます。


カミュ家のこだわりと情熱が詰まったカルバドスを是非ブラウンジャグでお楽しみください。







フランス ノルマンディー旅行記 PART3へ続く

                                                   

今宵はカルバドスというチケットを片手にブラウンジャグからノルマンディーへ旅立ちませんか?
旅の行程はアテンダント(バーテンダー)にご相談下さい。

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